クラウドにセーブデータを預ける、その怖さと便利さの話
オンライン接続が当たり前になった今、ゲームのセーブデータをクラウドに預けるのは普通の選択肢になった。Switch、PlayStation、Steam、果てはスマホゲームまで、気がつけばほとんどのプラットフォームが自動でアップロードしてくれる。でも正直に言うと、最初のうちは怖くて仕方なかった。データが消えたら何百時間も積み上げた冒険がパーになるかもしれない。誰かにアカウントを乗っ取られたら終わりだ。そんな不安を抱えながらも、今ではすっかりクラウド保存に頼り切っている自分がいる。
便利さと引き換えに、失うものもある。ローカルで完結していた頃とは違って、今は常に「何かあったらどうしよう」という小さな緊張感を抱えてゲームをしている。それでもクラウドに預ける理由はシンプルで、一度味わってしまうと便利さからはもう戻れないからだ。
このところ、ふと夜中に起動したSwitchが「セーブデータをアップロードしました」と教えてくれるのが妙に嬉しくて、勢いそのままにこの話をまとめることにした。同じように迷っている誰かの参考になれば嬉しい。
クラウドセーブを使い始めたきっかけ
最初の転機は、長期の出張に持ち運んだSwitchだった。飛行機の中で進めていたRPGが、新幹線の時間を潰すために始めたはずなのに気がつけば数十時間プレイしていて、ある日うっかり本体をソファから落としてしまった。画面は無事だったけれど、本体のストレージが一部読み込み不能になり、その瞬間ローカル保存への信頼が音を立てて崩れた。
それからすぐに加入したのが、Switch Onlineの追加パッケージだった。古いゲームのプレイ権がつくプランではなく、純粋にセーブデータバックアップのためだけに月数百円を払うのは少し恥ずかしかったけれど、実際にクラウドに上げ終わって画面が「完了」と表示された時の安心感は大きかった。今思えば、あの落下がなかったらクラウドへの移行はもっと先延ばしになっていたかもしれない。
セーブデータが消えた日のトラウマ
とはいっても、クラウド全盛の時代でも「全損」の話は定期的に目にする。サーバ側の障害、利用規約違反によるアカウント凍結、予想外のハードウェア故障。コミュニティで盛り上がっているタイトルほど、データを失った人の嘆きは人ごとのように思えない。長く遊んでいたゲームが消えた時、残るのは空虚感と、どうすることもできなかった自分への苛立ちだけだと、誰かがそう書いていたのを読んで胸が痛んだ。
自分の身近な例で言えば、ずいぶん前に昔の据置型で遊んでいたゲームが、本体の経年劣化で起動できなくなったことがある。あの頃はクラウドなんて概念がなく、吸い出しさえ失敗して手元に残ったのはゲームのケースだけだった。あの日以来、「どの端末にも一本で済ませない」「物理的なバックアップも取ってあるに越したことはない」と強く思うようになった。
どのプラットフォームが安心か
プラットフォームごとにクラウドの運用はかなり違う。手元で主に使うのはSwitchとSteam、そして少し前に始めたPlayStationの三つで、それぞれに性格がある。Switchは加入しているプラン次第で容量に制限があり、任意で個別にバックアップを取る必要があるので、うっかり上げ忘れて本体修理に出すと痛い目を見る。Steamはタイトルによって対応がまちまちで、有志が「これは対応していない」と掲示板にまとめてくれている情報に何度も救われた。PlayStationは体感いちばん放置運用が効いていて、本体の電源を入れたタイミングで勝手に整ってくれている感覚がある。
クラウドへの不安を完璧に消す方法は、今のところ自分に確立できていない。正直、どこも一長一短で、万能の保管庫というのは存在しない。結局は自分で「このタイトルは大事」と決めたものを別口でも残しておくという、地味な積み重ねが必要になる。
ローカル保存との併用という選択
クラウドだけに頼るのではなく、ローカルとの併用がいちばん気が楽だと最近は思っている。たとえばSwitchならSDカードへの自動バックアップをオンにし、Steamではクラウド非対応タイトルに対して手動でコピーしたフォルダを別ドライブに置いておく。大袈裟なことではなく、外付けSSDに丸ごとコピーして月一でローテーションするだけで、復旧の選択肢はかなり広がる。
クラウドを「日常使い」と位置づけ、ローカルを「保険」として二重化する。これだけで、サーバ側の障害やアカウント系のトラブルに見舞われても、冷静に対処できるはずだ。特別なソフトも要らないし、やり方はいくらでも応用が効く。地味だけど、ゲームを長く遊びたいならこれがいちばん堅いと感じている。
サブスク終了の不安と向き合う
クラウドセーブの怖さのひとつに、サブスクリプションの終了がある。Switch OnlineやPlayStation Plusのような月額プランは、解約するとセーブデータの閲覧やダウンロードに制限がかかるものがある。ゲームを遊び終わったからとそのまま解約してしまうと、ふと思い出した時にもう一度遊びたくなった時に困ることになる。
自分はこの問題を「解約前提で設計しない」というルールで回避している。サブスクを解約する前にプレイデータを全部ローカルに書き出し、本体に保存してある分はそのまま残す。クラウド上にあるデータは確認したら解約する、というフローを決めておくと気持ちがだいぶ楽になる。サブスクはあくまで「拡張機能」であって、本体に残ったデータは本体のもので、こちらを優先する、という基本姿勢がぶれなければ怖いことはない。
子どもが触る環境で考えること
家族で共有していると、子どもが間違ってセーブデータを上書きする場面にもしばしば出くわす。とくにRPGや育成系のゲームは、何時間分もの進行がボタン一つで吹き飛ぶ可能性がある。クラウドに上げていても、直近のバックアップが上書きされたタイミングとずれていると、結局ロールバックできない。
我が家では、家族のアカウントはそれぞれ別のプロフィールに分けて、親がメインで遊ぶユーザーとは別のセーブデータ領域を持たせている。そのうえで定期的にローカルへコピーし、家族共有フォルダに保存する。ある日の午後、子どもたちが順番待ちをしている間にふと気づいてセーブ整理をした日は、時間に追われているときだったのを覚えている。整理は地味だけど、家庭内では大事な儀式になりつつある。
お守り代わりにバックアップを取る
結局のところ、クラウドは便利だけど、それ一本で生きられるほど優しくはないと感じている。サーバーも、会社も、プラットフォームも、自分が永遠に同じ条件で使い続ける保証はどこにもない。だから、日頃のバックアップはお守りみたいなものだと思って取ることにしている。
「もし今日本体が壊れても、明日から別の場所で同じ続きから遊べる」と思えるだけで、ゲームに向かう時の気持ちはずいぶん軽くなる。怖さと便利さはコインの裏表で、片方だけを享受する生き方はおそらくできない。共存できる落とし所を見つけることが、いちばんのごまめの境地なのだろうと思う。
クラウド保存とうまく付き合っていくための、わたしが実践している小さなコツを並べておく。
- サブスクに加入したら、まず最初に任意のタイトルを一つだけクラウドに上げて動作確認をする
- 月に一度、外付けドライブにまるごとコピーするだけで、ローカルの保険はかなり厚くなる
- 古い据置機のセーブデータは、対応する吸出し機があるうちに吸い出してしまう
- アカウントは二段階認証を必ずオンにし、パスワードは他のサービスと使い回さない
- 子どもや家族が使う環境では、セーブ上書きの確認画面をデフォルトで表示される設定にしておく
- プラットフォームごとに「どのタイトルがクラウド非対応か」を一度まとめておく
- サブスク解約前は、必ず該当データをローカルに書き出してから手続きする
クラウドもローカルも、結局は自分のゲームを自分らしく守るためにある。過度に恐れず、過度に頼らず、少しずつ距離感を調整していく。それがいちばん気楽な付き合い方だと、いつの間にかそう思うようになっていた。今夜も Switchが、知らない間にセーブをそっと預かってくれている。